AIは公式サイトだけを見ているわけではない

「AIに正しく理解される会社になるには、公式サイトを充実させればよいのでは」と考える方は少なくありません。もちろん公式サイトは重要な情報源ですが、生成AIが回答を作る際に参照する情報源は、それだけに限りません。

OpenAIは公式ヘルプページ「Searching the web with ChatGPT」で、ChatGPTが必要に応じてWeb検索を行い、回答の中にインラインの引用を含めること、ユーザーが「Sources」から参照元の一覧を確認できることを説明しています。Perplexityも公式ヘルプセンター「How does Perplexity work?」で、検索結果を取得したうえで、複数のページを関連度・新しさ・信頼性・構造といった観点で評価し、実際に回答へ引用するのはその一部である、という趣旨の仕組みを説明しています。

つまり、AIは「その企業の公式サイトに何が書いてあるか」だけでなく、「その企業について、Web上のどこで、どのように言及されているか」を広く参照する前提で設計されている、と考えるのが自然です。

「引用される」はゴールではない

この記事のタイトルには「引用されやすい」という言葉を使っていますが、引用されること自体をゴールにするのは早計です。

「AIO・LLMO・GEOとは?2026年のAI検索対策を地域企業向けに整理」で整理したとおり、AIの回答内での「引用(Citation)」と「推薦(Recommendation)」は同じではありません。参照元として引用されていても、比較の中で推薦されるとは限りませんし、逆に直接のリンクとして引用されなくても、回答の背後にある情報として企業名やサービス内容が言及されることもあります。

この記事で扱う「AIに引用されやすい企業情報」は、引用という現象そのものを目的にするのではなく、AIが企業を正しく理解し、比較の候補に入れ、必要に応じて引用・推薦できる状態を作るための土台、という位置づけで捉えてください。

Owned・Earned・Local・Socialという整理

情報源を整理する枠組みとして、マーケティング業界には古くから「Paid(広告)・Owned(自社発信)・Earned(第三者からの評価・報道)」、さらに「Shared(SNS等での共有)」を加えた分類があります。この分類は2009年にForresterのSean Corcoran氏が整理・命名し、その後Gini Dietrich氏によって「PESO(Paid/Earned/Shared/Owned)モデル」として体系化されたことが知られています。

EMOVIAでは、地域企業がAI検索に対して整えるべき情報源という文脈に合わせて、この考え方を次の4種類に再構成しています(これはEMOVIA独自の整理であり、PESOモデルそのままの引用ではありません)。

  • Owned(自社発信): 公式サイト、MAGAZINE(自社ブログ)、公式SNSアカウントでの発信など、自社がコントロールできる情報。
  • Earned(第三者からの言及): 地域メディアでの掲載、PR、比較サイトでの紹介など、自社の外側で生まれる言及。
  • Local(地域情報): Googleビジネスプロフィールをはじめとする、地図・地域ディレクトリ上の情報。
  • Social(SNSでの発信・反応): Instagram・LINEなど、企業・利用者双方からの発信。

AIが企業を理解するために必要な具体的な情報

情報源をどれだけ増やしても、そこに書かれている内容が抽象的であれば、AIが理解・比較に使える材料にはなりません。Googleは「Creating Helpful, Reliable, People-First Content」の中で、実際の専門性・経験に基づく具体性のあるコンテンツを重視する考え方を示しています。この考え方を踏まえると、Owned・Earned・Local・Socialのいずれの情報源でも、次のような要素が具体的に、かつ一貫して示されていることが土台になります。

  • 企業名・屋号: 表記ゆれ(正式名称・略称・旧名称の混在)がないか
  • 提供しているサービス・商品: 抽象的な言葉だけでなく、具体的に何を提供しているか
  • 対応エリア: どの地域を対象にしているか
  • 強み・差別化点: 何が他社と違うのか、具体的に説明できているか
  • 実績: 確認できる範囲で、具体的な取り組み・事例
  • 対象顧客: どんな顧客・場面を想定しているか

これらは目新しい要素ではなく、従来のマーケティング・Web制作でも重視されてきた基本です。AIOという文脈でも、この基本が土台であることに変わりはない、というのがEMOVIAの見解です。

AIが参照する情報源の傾向

ここからは、実際に確認できている傾向を紹介します。ただし、ここで紹介するAhrefsの調査は、地域の中小企業に特化した調査ではなく、より広範なブランドを対象にした調査である点には注意が必要です。

Ahrefsが公表した「Top Brand Visibility Factors in ChatGPT, AI Mode, and AI Overviews」というレポートには、性質の異なる2つの分析が含まれています。一つは、ChatGPTが実際に引用したページを対象にした分析で、そのうち65.3%はドメインレーティング(DR、Ahrefs独自の被リンク蓄積度の指標。Mozの「ドメインオーソリティ」とは別の指標です)が高いドメインからのものだったと報告されています。もう一つは、75,000ブランドを対象にした別の調査で、YouTubeへの言及が、ChatGPT・AI Mode・AI Overviewsを横断して、他のどの要因よりもAIでの可視性と強い相関を示した、と報告されています。この2つは同じサンプル・同じ手法による結果ではないため、本記事でも別々の分析として扱います。

これらの結果は、あくまで大規模調査における相関関係であり、「YouTubeに言及されれば必ずAIに引用される」という因果関係を証明するものではありません。また、調査対象がグローバル規模のブランドを中心にしていると考えられるため、石川県・北陸の地域企業に同じ傾向がそのまま当てはまるかどうかは、EMOVIAとしても確認できていません。それでも、「公式サイト以外の、第三者が運営するプラットフォーム上での言及」が一定の役割を果たしている可能性がある、という方向性は参考になります。

公式サイトだけでは不足するケース

公式サイトは、自社がコントロールできる最も詳細な情報源である一方、次のような限界もあります。

  • 更新頻度が低くなりがちで、最新の状況が反映されにくい
  • 「自社がそう言っている」という情報にとどまり、第三者による裏付けがない
  • 単一のドメインからの情報しかなく、AIが複数の情報源を横断して確認する際に、参照できる材料が少ない

Google自身も、「Creating Helpful, Reliable, People-First Content」というガイドラインの中で、専門性や第一想起の経験を伴うコンテンツを重視する考え方を示しており、こうした裏付けは自社発信だけで完結させるのが難しい場合があります。

Earned/Local/Socialの具体例

地域企業が実際に取り組める、Owned以外の情報源の例を挙げます。

  • CASE(事例紹介): 自社での取り組みを、確認できた事実の範囲で具体的に紹介する。
  • MAGAZINE(自社の調査・解説記事): 業界特有の知見を、出典を明示しながら発信する。
  • PR・地域メディアでの掲載: 地方紙・地域情報サイトなど、第三者が発信する情報。
  • 比較サイト・業界ディレクトリ: 業種別のポータルサイトなどへの掲載。
  • 口コミ: Googleビジネスプロフィールなどに蓄積される、利用者からの評価。
  • SNS: Instagram・LINEなど、日々の発信と利用者からの反応。
  • 外部プロフィール: 代表者・スタッフの外部媒体での紹介や登壇情報など(実在し、確認できるものに限る)。

これらはいずれも、「自社がそう言っている」だけでなく、「第三者から見てもそう見える」という裏付けを作る役割を持っています。

情報整合性という土台

「Googleマップ・MEOはAI検索に関係する?地域企業が整えるべき情報を解説」で扱ったとおり、Googleビジネスプロフィールに登録する住所・電話番号などの基本情報は、公式サイトやSNSと一致していることが、Google自身のガイドラインでも求められています。この一貫性は、Owned・Earned・Local・Socialのどの情報源についても共通する土台です。schema.orgのOrganizationには、sameAsというプロパティがあり、企業の公式サイトと、SNSアカウントなど関連する情報源を明示的に結びつける仕組みが用意されています。これは、複数の情報源が「同じ一つの企業」を指し示していることを、機械的にも示すための技術的な手段の一例です。

AIに理解されにくい企業情報の例

ここまでの内容を踏まえると、次のような状態は、AIにとって理解・比較の材料にしにくい企業情報だと考えられます。

  • 説明が抽象的な言葉だけで終わっており、具体的に何を提供しているかが分からない
  • 情報の更新が止まっており、現在の事業内容と食い違っている
  • 公式サイト・GBP・SNSなど、チャネルごとに書かれている内容が矛盾している
  • 自社がそう言っているだけで、第三者からの裏付けが確認できない
  • 専門性や実績の根拠(具体的な取り組み・経験)が示されていない

これらはいずれも、目新しい技術的な欠陥ではなく、従来から「分かりにくい企業情報」とされてきたものと重なります。AI検索時代においても、この基本が変わらず重要だというのがEMOVIAの見解です。

EMOVIAが目指す「企業情報の整合ネットワーク」(EMOVIA独自の整理概念)

以上を踏まえ、EMOVIAでは、Owned(公式サイト・MAGAZINE)・Earned(PR・地域メディア・比較サイト)・Local(Googleビジネスプロフィール)・Social(SNS・口コミ)という4種類の情報源が、矛盾なく同じ実態を指し示している状態を「企業情報の整合ネットワーク」と呼んでいます。これは業界標準の用語ではなく、EMOVIAが独自に整理した考え方であり、外部に同名の確立した学術用語があるわけではありません。

しかし、「AIO・LLMO・GEOとは?2026年のAI検索対策を地域企業向けに整理」で紹介した「見つかる→理解される→信頼される→選ばれる」という段階を進めていくうえで、公式サイト単体の充実だけでなく、こうした複数の情報源をネットワークとして整えていく視点が欠かせない、というのがEMOVIAの結論です。

地域企業が優先して整えるべき項目

  • 企業名・所在地・電話番号などの基本情報が、公式サイト・GBP・SNS・外部ディレクトリで一致しているか
  • 提供しているサービス・強み・対象顧客を、抽象的な言葉ではなく具体的に説明できているか
  • 情報が古いまま放置されている箇所がないか(サービス内容・実績・写真等)
  • 自社の説明を裏付ける第三者からの言及(CASE・PR・口コミ・外部プロフィール等)が最低限存在するか
  • schema.orgのsameAs等、複数の情報源を機械的に結びつける仕組みを使えているか

まとめ

生成AIは、公式サイトだけでなく、第三者メディア・口コミ・SNSなど、Web上に存在するさまざまな情報源を参照する前提で設計されています。ただし目的は「引用されること」自体ではなく、AIが企業を正しく理解し、比較の候補に入り、必要に応じて引用・推薦される状態を作ることです。自社の情報が、これらの情報源を横断して、矛盾なく・具体的に伝わっているかどうかを確認することが、その第一歩になります。

自社の情報が現在どこまで整合しているかは、AIO無料診断で、公式Web・Googleマップ・AI検索・第三者情報を横断して確認できます。